【112冊目】『マグマ』ー「地熱発電」知ってる??
「地熱発電」を知っていますか?
本書はその地熱発電を題材にした経済小説です。
Wikipediaより引用させてもらうと…
地熱発電とは、地熱(主に火山活動による)を用いて行う発電のことである。再生可能エネルギーの一種であり、太陽の核融合エネルギーを由来としない数少ない発電方法のひとつでもある。ウランや石油等の枯渇性エネルギーの価格高騰や地球温暖化への対策手法となることから、エネルギー安全保障の観点からも各国で利用拡大だ図られつつある。
本書は、外資系投資ファンドが、民事再生法を申請した「日本地熱開発」という地熱発電について研究、開発を行っている会社を再生させるという話。
発電の主役は原子力であり、完全にその陰になっていて見捨てられている地熱発電を再生していく。現実でもそうだと思いますが、こういったエネルギー問題は様々な利害関係者が登場し、それぞれの思惑が錯綜します。
エネルギー問題を題材の小説もあまり多くないのではないでしょうか。
僕自身初めて読みました。というか、地熱発電に関してもほとんど知らなかったのです。このエネルギーは、火山活動による地熱を利用しているということですから、火山の多い日本ではもっと発達していいのかな?と思いました。
本書でも書かれていましたが、地熱発電は大容量の発電所を作りにくいという特徴や、
費用の面など難しい問題はあるのかもしれませんが。
原子力発電に関しては、福島の原発事故で一気に議論が高まりましたがこの小説が書かれたのは2006年ですからもっと前。
その事故で完全に安全神話の崩れた原子力発電。ただ、今も原子力発電に頼っている今があります。その状況下でエネルギー問題を考えるときに、こういった地熱発電など他の発電方法も知っておく必要はあるのではないかと思いましたね。
九州電力のWEBページがわかりやすいです。
毎日何気なく使っている電気。電気がなければ、今行っている生活はほとんど何もできなくなります。
実際は、普段使っている電気を、空気のようなものだと勘違いしていた
その電気がどう発電され我々の生活に届いているのか。そんなきっかけになる1冊だと思います。
また本書は、企業を再生していくという話でもあるのでその部分で参考になることもたくさんあります。
ターンアラウンド・マネージャーの最大の勝負どころは、初めてその会社に足を踏み入れて、社員と対面する一瞬だと言われている。そこで彼らの冷たい視線や拒絶を物ともせず、敵ではなく救世主なのだということを、相手に分からせなければならない。
よそからやってきて会社を立て直すときに、敵だと思われたらうまくいくものもいかない。これは会社を立て直すだけでなく、どんな組織にも当てはまると思います。
この業界で生き残る最大のポイント。それは、めげないことだ。一つや二つの戦略がうまくいかなくても、すぐに次の攻勢をかける。いや、最初から、第二、第三の手だてを打って勝負に挑むだけの深謀遠慮なものだけが勝利を手にする。
この投資ファンドの世界だけでなく、勝負に勝っていくには第二、第三の手立ては必ず必要になるのは間違いないと思います。何事に対してもそうですね。すぐにうまくいくことの方が少ないですから。
営業先は、「日本の業界一位だけを狙え。そこを落とせば、五月雨式に後はついてくる。営業する際には、専務以下の人間には会うな。こういうビジネスは、トップ営業しかない
業界1位を狙う。シェアがナンバーワンを落とせばあとは勝手についてくるということ。これはなるほどと思いましたね。
人はとにかく自分流の解釈をくだすものだ、事物本来の姿がさし示すものとは離れてな
これは「シェイクスピア」の言葉。
人間はどうしても自分に都合よく解釈してしまう。注意が必要ですね。
☆☆☆☆☆
経済小説って面白いですよね。
ちなみにこの小説の著者はあの有名な『ハゲタカ』の著者です。
参考記事:【48冊目】ハゲタカシリーズ~面白すぎる経済小説 - 今が大事
本書もきちんと取材等をして書いてあるんだろうなと感じました。勉強にもなるし、小説として物語も楽しむことができます。
僕は、「地熱発電」のことについてほとんど知らなかったので、本書を読んで良かったですね。
エネルギーに興味のある人、「地熱発電」のことを知らない人、興味のある人は読んでみてはいかがでしょうか。
- 作者: 真山仁
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/08/25
- メディア: 文庫
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